え01 永劫刑罰>>>エックハルト

永劫刑罰372,・説396
永生輪廻544
疫病・刑罰・解剖213
円華窓211,318,えんげまど317,十二宮の・317,379,456,562,ゾーディアックの・642
英町エーカー・尺ざし212,富貴の・旗ばた214,Acre214
倫理学エーティリッシュ480
エーテル388,537,・を噴霧状にして皮膚に吹きつける387
エーネアスアテネの戦術家・459
別名エーリアス594
エールブルグ330→アルベルツス・マグヌス
エーワルト334
聖餐式エウスカリア198
エヴ女にして・507→エバ
エクスター教区200
心神顛倒エクスタシー320
埃及エジプト・彫像219,357,古代・人257,一艘の・船255,・艀259
表情的エスパショーネ523
此の人を見よエセ・ホモ316,340,394→ニーチェ,この人を見よエセ・ホモ 586
Xエックスの実数477
エックハルト中世最大の神秘家・491

永劫刑罰

372,・説 396
▼天来の瞰視をうけているような意識に駆られて、審判とか刑罰とか云うような、妙に原人ぽい恐怖が齎されて来るのですよ。大体そう云った宗教的感情などと云う代物は、一種の本能的潜在物なんですからね。どんな偉大な知力をもってしても、容易に克服できるものではありません。直観的ではあるが、決して思弁的ではないのです。もともと刑罰神一神説は……公教精神は、聖アウグスチヌスが永劫刑罰説を唱えたとき、既に超個人的な、抜くべからざる力に達していたのですからね。396p
■劫罰damnation語源は、後期ラテン語で「断罪」を意味するdamunatio。地獄で永遠の責め苦を課される罰。救いの反意語。神意はすべての人間が救われるところにあるが(『ヨハネによる福音書』3.17)、神を拒む者に対する劫罰が永遠に続くということは、イエスのいくつかの言葉によって確認される(『マタイによる福音書』8.12/25.46)
★文学・ゲーテ『ファウスト』1808・32 ファウストは、善への願望と《欲望の嵐》とが対立する人間に化身する。そんなファウストを、メフィストフェレスは賭で何とか負かそうとするが、神は人間性を信用している。こうしてファウストは劫罰をまぬがれる。【キリスト教文化事典】

「ベリー侯のいとも豪華なる時祷書」より

永生輪廻

544
■〔仏〕(梵語 samsara 流れる意)車輪が回転してきわまりないように、衆生が三界六道に迷いの生死を重ねてとどまることのないこと。迷いの世界を生きかわり死にかわること。流転。【広辞苑】

疫病・刑罰・解剖

213
▼「無論、此処に必要だったのさ。とにかく、三つの画を見給え。疫病・刑罰・解剖だろう。それに、犯人がもう一つ加えたものがある──それが、殺人なんだよ」213p
★それぞれの絵画作品は、驚いたことにすべて実在する。それについては各々その項目で紹介することにする。

円華窓

211,318,えんげまど317,十二宮の・317,379,456,562,ゾーディアックの642
★rose windowに、車輪窓、圓花窓の訳語あり。建築學會編纂「英和建築語彙」丸善刊 大正八年初版昭和二年第六版による。
但し、虫太郎が設定する窓のデザインを「薔薇窓」とはよべない。
訳語のとおり、本来は幾何学的な構成による花卉様デザインの教会等の窓を言う。
本文より

★普遍的支配者としてのエリザベス1世
星の処女神アストライアに擬せられる女王の権威を、諸天球と星辰の感応力が保証する。

J.ケイス〈国の天球〉1588の木版口絵【大百科】より
前項「円華窓」のモデルと思われる画像。
円形の部分は他の絵画的天球図を組み合わせたのだろう。

英町エーカー

・尺ざし212,富貴の・旗ばた214,Acre214
▼「取りも直さず、これが今度の降矢木事件の象徴シムボルという訳さ。犯人はこの大旆たいはいを掲げて、陰微のうちに殺戮を宣言している。或は、僕等に対する、挑戦の意志かも知れないよ。大体支倉君、二つの甲冑武者が、右のは右手に、左のは左手に旌旗の柄を握っているだろう。然し、階段の裾にある時を考えると、右の方は左手に、左の方は右手に持って、構図から均斉を失わないのが定法じゃないか。そうすると、現在の形は、左右を入れ違えて置いた事になるだろう。つまり、左の方から云って、富貴の英町旗エーカーばた──信仰の弥撒旗ミサばたとなっていたのが、逆になったのだから……そこに怖しい犯人の意志が現われて来るんだ」
「何が」
「Mass(弥撒)とAcre(英町)だよ。続けて読んで見給え。信仰と富貴が、Massacre──虐殺に化けてしまうぜ」214p
■面積の単位としては4048.6u。複数で土地、田畑。【SSD】
★エーカー尺はともかく、エーカー旗とはいかなるものか。
注釈者のイメージの中に近世の領地図の片隅に描かれた旗を持った郷士の図が浮かぶが具体的な裏付けがあるわけではない。

倫理学エーティリッシュ

480
■倫理学=ethik,倫理学的の,道徳的のethisch, Atherisch蒼天の【GDW】
★ルビの読みは虫太郎の間違い。

エーテル

388,537,・を噴霧状にして皮膚に吹きつける387
▼「マア聴き給え。恐ろしく悪魔的なユーモアなんだから。エーテルを噴霧状にして皮膚に吹きつけると、その部分の感覚が滲透的に脱失してしまう。それを失神した人間の全身に渉って行うのだが、手の運動を司どる第七第八頸椎に当る部分だけを、恰度ジーグフリードの木の葉のように残して置くのだ。何故なら、失神中は皮膚の触覚を欠いていても、内部の筋覚や関節感覚、それに、擽痒かゆみの感覚には一番刺戟され易いのだからね。すると、当然その場所に、劇烈な擽痒かゆみが起る。そうしてそれが電気刺戟のように、頸髄神経の目的とする部分を刺戟して、指に無意識運動を起させるに違いないのだ。つまりこの一つで、伸子が如何にして鎧通しを握ったか――と云う点に、根本の公式を掴んだような気がしたのだ。乙骨君、君は故意か内発かと云ったけれども、僕は、故意かエーテルに代る何物かと云いたいんだ。どうして、その本体を突き詰めるまでには、まだまだ繊細微妙な分析的神経が必要なんだよ」387-8p
■ether【SSD】【毒薬 139p】
■局所麻酔薬は原則として意識や反射機能は正常に保ったままで,目的とする局所の知覚を鈍麻もしくは消失させ,局所的疼痛を軽減させる薬物をいう。局所的な手術の際に,疼痛の軽減または消失に用いるのが主用途である。 寒冷麻酔薬としては沸点の低いエーテル,クロロホルム,クロルメチルなど気化熱を奪うことによって局部凍結をきたし知覚を鈍化させる作用をもつものである。【大百科】

エーネアス

アテネの戦術家・459
▼原註(ジグザグ記法――。此の方法は、アテネの戦術家エーネアスが、自著Polioeretes中の第三十三章に記載せしに始まる。方眼紙にABCを任意に配列し、それを先方に通じておいて、通信は、それを連ねるジグザグの線のみを以てす)459p
■アイネイアスAineias Tacticus 前4世紀【IB】
■時代と共にギリシャでは、秘密急報の方法がますます多くなった。紀元前第四世紀の中頃、都市の包囲攻撃に関して、戦術家アイネイアス〈Aeneas Tacticus〉と呼ばれる一書を著した古い一軍事記者は、包囲攻撃にも大きな役割を演ずるこの問題をきわめて重視し、大部な章(第三一章)を費やしている。彼は同章で秘密急報と暗号記法との方式を一六種類記載している。
★但し以下に引用される暗号記法二種は、虫太郎の述べているものとは一致しない。
【古代技術 78-81p】ディールス著平田寛譯 創元科学叢書30 1943初版1947再版
  *底本【Antike Technik】は1924年著者死後の版である。
  *教養文庫版「白蟻」所収長田順行「虫太郎と暗号」のリストでは1914年初版。
  岩波書店刊【機械発明史】アッシャー著富成喜馬平譯の文献目録では1920年再版。

別名エーリアス

594
▼――博士ファウスト別名オットカール・レヴェズが、人生を煙りのように去った。594p
■alias 副詞として、〈犯人が〉一名…,別名は:John Smith 〜 James Johnson ジョン スミス別名ジェイムズ ジョンソン,ジェイムズ ジョンソンこと本名ジョン スミス.
名詞として、別名,偽名: under an 〜 偽名を使って.ラテン語「ほかの場合には」の意【SSD】

エールブルグ

330→アルベルツス・マグヌス
▼アルベルツス・マグヌス(十三世紀の末、エールブルグのドミニク僧団にいた高僧。錬金魔法師の声名高しと雖も、通性論哲学者であり且又中世著名の物理学者殊に心霊術士としては古今無双ならんと云わる)330p
★Elburgはオランダの都市で、アルベルツス・マグヌスとの関係は不明
★Albert's studies were continued at Padua, Bologna, Paris, or Cologne. After completing his studies he taught theology at Hildesheim, Freiburg (Breisgau), Ratisbon, Strasburg, and Cologne.
★マイスター・エックハルトの項参照。

エーワルト

334
▼大体ヘンゼンでもエーワルトでもそうだが、お互いに聴覚生理の論争はしていても、これだけは、はっきりと認めている。334p
■エヴァルト Eward, Carl Anton (1845-1915)ドイツの医者。ベルリン大学の助教授。【IB】
★ただし、消化器官の研究者である。

聖餐式エウスカリア

198
■ευχαριστια =eucharistia【カトリック典礼入門】・の大祈祷(三時課の後9am)【同】
■たっときエウカリスチヤのサカラメント【どちりな・きりしたんI.L.】
■八日の七日eucharistia聖体ユウカリスチヤ【かくれキリシタン NHK B.157p】ヨーカノシチヤユーカリスチヤ【同書284p.】→【教養文庫解題481】
■聖餐 キリスト教の基本用語の一つ。聖書ギリシア語のeucharistia(特に〈神に対する感謝〉の意)に由来する。キリスト者にとって最も完全な感謝は,その教会生活の中心となる礼拝集会であるとして,古代からこれに同じ言葉が用いられ,日本語では〈感謝の祭儀〉と訳す。さらにその中で聖別されたパンとブドウ酒(特にパン)にも同じ言葉が使われるようになり,これを日本語でカトリック教会では〈聖体〉と呼び,プロテスタント教会では一般に聖別の制定句と陪餐(聖体拝領)を含む Holy Communion の訳語として〈聖餐〉が使われている。〈聖体〉は聖別されたパンとブドウ酒のほうに,〈聖餐〉はそれによるキリスト者の交わりの行為全体についてエキュメニカルに(教会一致の立場に立って)用いることができる。七つの秘跡の一つ,サクラメントの中心としての〈聖餐〉は,パンとブドウ酒の形態のもとにおけるキリストの現在だけに限られず,〈感謝の典礼〉とそれに続く〈交わりの儀〉全体に及ぶべきもので,キリストの制定によることばとパンとブドウ酒のしるしによる,キリストの十字架上の奉献の記念祭儀への完全な参加を意味する。【大百科】
■Holy Communion聖餐式。聖晩餐。【広辞苑】
★すべての用例でエウカリスチア。これも虫太郎の記憶違い。

エヴ

女にして・507→エバ
▼エホバ神は半陰陽なりき。初めに自らいとなみて、双生児を生み給えり。最初に胎より出でしは、女にしてエヴと名付け、次なるは男にしてアダムと名付けたり。507p

イヴの誕生BURNEY「失楽園」画集より

エクスター教区

200
■エクセター Exeter イギリス,イングランド南西部のデボンシャーの州都。地名は〈エクス河畔のローマ軍駐屯地〉の意。ラテン名はイスカ・ドゥムノニオルム IscaDumnoniorum。人口10万5000(1991)。エクス河口に位置し,コーンウォール半島の商業,交通,観光の中心地をなす。
周辺農業地帯の交易中心地でもあり,皮革,製紙,農業機械などの工業が発達する。もとはケルト系ドゥムノニイ族の拠点であったが,ローマ時代に町が建設され,フォス・ウェーと呼ばれるローマ道路もイングランド北部のリンカンまで通じていた。中世にも戦略的位置を重視され,ノルマン・コンクエスト前にすでに自治都市であったが,正式な勅許はヘンリー2世によって下された。16世紀後半に羊毛工業が導入されて発展,一時はリーズと肩を並べ,サージの取引市場も開かれた。また1559年の冒険商人組合の結成によって,アメリカ貿易の基地ともなった。市内には1050年の司教管区設置に伴って建立された大聖堂や,ウィリアム征服王が建設した城の一部,ギルドホールなどが残っているが,中世風建物の多くは,1942年のドイツ軍の空襲によって破壊された。長谷川 孝治【大百科】

心神顛倒エクスタシー

320 ▼「勿論明白なものさ。然し、失神トランス――だからこそなんだ。それが精神病理学の領域にあるものなら、古いペッパーの『類症鑑別』一冊だけで、悠に片附いてしまうぜ。無論癲癇てんかんでもヒステリー発作でもないよ。また、心神顛倒エクスタシーは表情で見当が附くし、類死カタレプシーや病的半睡モービット・ソムノレンスや電気睡眠エレクトリシェ・シュラッシュヒトでも決してないのだ」320p
■Ecstasy精神混迷【SSD】
★アダの症状
娘は寝台にはすかいにねていましたが、ひとめみただけで、ストリキニーネとは開係がないとわかりました。痙攣けいれんも、発汗も、risus sardonicus(痙攣的にひきつった表情をするのを指す医学上の術語─原註)もないのです。おだやかで静かで、呼吸が浅く、サイアノーシス(紫藍色)が現れていました。あきらかにモルヒネです。
それで瞳を調べてみました。針の先でついたほど小さい。もう疑いはありません。そこで看護婦を呼びにやって、すぐと手当にとりかかりました」【グリーン家殺人事件】SML334-5p
★戦前版のグリーン家では、risus sardonicusの単語と原注は割愛されている。
★それにしても、症状名の大盤振る舞いは見事なものだ。

埃及エジプト

・彫像219,357,古代・人257,一艘の・船255,・艀259

ナポレオンによる「エジプト誌」TASCHEN刊より
★本文中イラスト(黙視図)256のモデルと思われる。

表情的エスパショーネ

523
■espressione - expression【I-E】表現(言葉・顔つきなどに)表すこと【multi】
★エスプレッシヴォ〔espressivo.虫太郎は、これをcon espressioneと混同し、そのespressione「感情」をpassione 「情熱」と取り違え、後者に前者のes-を付けたらしい。「真情の吐露」を意味しうるespansioneの連想も作用したかもしれない。〕【教養文庫解題500】

此の人を見よエセ・ホモ

316,340,394→ニーチェ,この人を見よエセ・ホモ 586
■Ecce Homo キリストを指すピラトの言【ヨハネ伝19.5】【広辞苑】

ティツィアーノ「エッケ・ホモ」ウイーン美術史美術館総合ガイドより

Xエックスの実数

477
■実数 ふつうに数と呼ばれるもので、有理数と無理数を合せたもの。有理数は分数または有限小数、循環無限小数で表され、無理数は循環しない無限小数で表される。すなわち、有限・無限小数の総称が実数である。⇔虚数。【広辞苑】real number【辭】
★勿論この用例は、広辞苑の定義とは関係ない。言い換えれば虚数を文字面で解釈して嘘の数としてとらえ、その反対に実数という言葉をおいている。
★「マーカム、われわれは、グリーン事件の個々のできごとを、脈絡のない写真のなかの形象と同じように眺めてきた。事件が起るたびに調べることは調べたが、それをすでに知っているすべての事実と関連させて分析することを怠った。われわれは、この事件全体を、個々の整数の連続、あるいは集合として考えていた。その結果として、できごとのひとつひとつの意味をすべて見失ってしまったのだ。事件の根底を形づくっている構図をつきとめていなかったからだ。個々の事件は、その一部分にすぎないのにね。──わかるかね?」
「わかるとも」H309-4 380【ヴァン・ダイン】

エックハルト

中世最大の神秘家・491
▼却ってその意味は、エックハルト(ヨハン、一二六○――一三二九年。エルフルトのドミニカン僧より始め、中世最大の神秘家と云われた汎神論神学者)の云う霊性ガイスチヒカイトの方に近いのかも知れませんわ。父から子に――人間の種子が必ず一度は流転せねばならぬ生死の境、つまり、暗黒やみに風雨が吹き荒ぶ、あの荒野ヴュステの事をですわ。491p
■Eckhart, Johanes Meister E.(1260?-1327?)【IB】
■エックハルト 1260‐1328 Johannes Eckhart
ドイツ神秘主義の代表的思想家。MeisterEckhart の尊称で知られる。中部ドイツ,チューリンゲン地方のホーホハイムに生まれ,若くして托鉢修道会ドミニコ会に入る。パリ大学およびドミニコ会のケルン神学大学に学ぶ。以後同修道会において,エアフルト修道院長,ザクセン管区長,総会長代理などを歴任し中枢的な実践的指導者として活動。他方トマス・アクイナスをつぐすぐれたスコラ学者・神学者としてドミニコ会よりパリ大学に講義のため3度派遣され(その間1302年神学博士号を受ける),最晩年にはケルン神学大学の学頭をつとめる。【大百科】

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