き02 教会音楽>>>『近世迷宮事件考察』

教会音楽207,猶太ユダヤ339
共感現象542
狂人274,390,・詩人408,・染みた615,・の境界470
響石きょうせき326,・楽器328
胸腺418,・死646
共変法297
恐怖悲劇460,527,609
共鳴現象328
経文歌286,287,310→モテット
協和絃317
曲毬きょくまり224
曲面の壁305
虚数534
切石・積211,薔薇色の小さな・210
記録筒546→オルゴール
金星281,・の後方282,・の半径282
『近世迷宮事件考察』205→小城魚太郎こしろうおたろう→キューダビイ壊崩録かいほうろく

教会音楽

207,猶太ユダヤ339
■一般に、キリスト教教会の典礼・礼拝に用いる音楽をいう。ミサ曲・聖歌・讃美歌など。【広辞苑】
▼「然し、何故なにゆえに博士が、あの四人に奇怪な生活を送らせたのだろうか、また、四人がどう してそれに黙従していたのだろう。所がね、日本の内地では唯それを不思議がるのみの事で、一向突込んだ調査をした者がなかったのだが、偶然四人の出生地から身分まで調べ上げた好事家を、 僕は合衆国で発見したのだ。
恐らくこれが、あの四人に関する唯一の資料と云ってもいいだろうと思うよ」そして取り上げたのは、一九○一年二月号の「ハートフォード福音伝導者エヴァンジェリスト」誌で、それが卓上に残った最後だった。「読んでみよう。著者はファロウという人で、教会音楽の部にある記述なんだが」206-7p
▼猶太教会音楽の珍籍としてフロウベルガーの『フェルディナンド四世の死に対する悲嘆』の原譜339p
■一般に、キリスト教教会の典礼・礼拝に用いる音楽をいう。ミサ曲・聖歌・讃美歌など。【広辞苑】

共感現象

542
▼所で、僕はゴールトンの仮説を剽窃して、それでレヴェズの心像を分析して見たのだ。と云うのは、 あの心理学者の名誉――『人間能力の考察インクワイアリー・イントゥ・ヒューマン・ファカルティ』の中に現われている事だが、想像力の優れた人物になると、語や数字に共感現象が起って、それに関聯した図式を、具体的な明瞭な形で頭の中へ泛べる場合があるのだ。
■(sympathy の訳語) 他人の体験する感情や心的状態、或いは人の主張などを、自分も全く同じように感じたり理解したりすること。同感。【広辞苑】

★“ゴールトンの仮説セオリー”については後出(数型式ナムバア・フォムス 542)で詳説。

狂人

274,390,・詩人408,・染みた615,・の境界470
■正気を失った人。【広辞苑】
▼「ねえ支倉君、僕にはレヴェズの壮烈な姿が、絶えず執拗っこく附き纏っているのだがね。あの男の心理は、実に錯雑を極めているのだ。或は誰かを庇おうとしての騎士的精神かも知れないし、また、ああ云う深刻な精神葛藤が、既にもう、あの男に狂人の境界を跨せているのかも判らない。だが、何より濃厚なのは、あの男が死体運搬車に乗っている姿なんだよ」470p

響石きょうせき

326,・楽器328
▼熊城君、君は木琴シロフォーンを知っているだろう。つまり、乾燥した木片なり、或る種類の石を打つと、それが金属性の音響を発すると云う事なんだ。古代支那には、扁石鼓ピエンキンのような響石楽器や、方響器ファンピアンのような扁板打楽器へんばんだがっきがあり、古代インカの乾木鼓テポナットリやアマゾン印度人インディアンの刃形響石はがたきょうきも知られている。328p

胸腺

418,・死646
▼所で、最初に原因不明の窒息に就いては、それを器械的胸腺死メカニシェル・ティムストット――と云うよりも、胸腺に或る器械的な圧追を外部から加えたものだと主張する、即ち川那部易介は、成年に達しても依然発育した胸腺を有する、一種の特異体質者に相違ないのである。418p
■前縦隔上部で胸骨の後ろ側にある扁平葉状の器官。小児期によく発達し、思春期以後退化する。 骨髄に由来する前駆細胞(前T細胞)を受けて、免疫機能を持つ胸腺リンパ球(Tリンパ球)に分化・増殖させて、血行を介して全身の末梢リンパ組織に送る。【広辞苑】
■器械的胸腺死 mechanischer thymustod
★モルス・チミカ(胸腺死) ローマの死に神モルスに由来 【「神話、伝説、医学用語」竹村文祥 1978年東明社】

共変法

297
▼勿論その共変法じみた因果関係は、他の二人にも即座に響いていた。297p
■共變法Method of concomitant variation 二現象が常に同じ割合にて變更し行く場合に、兩者に因果關係あるべしと推知する方法。【廣辭林】

恐怖悲劇

460,527,609
▼クリヴォフ夫人に帰納されて行った法水の超人的な解析も、この底知れない恐怖悲劇にとっては、 たかが一場の間狂言ツィッシェンシュピールに過ぎなかったのである。460p

共鳴現象

328
▼所で、この場合は、頗る妖術的な共鳴現象を思い附いたのだ。328p
■resonance 物理系が外部からの刺激で固有振動を始めること。特に刺激が固有振動数に近い振動数を持つ場合を指す。ポーリングが提唱した、分子の化学構造についての概念。転じて、他人の思想や意見に同感の念を起すこと。【広辞苑】
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経文歌

286,287,310→モテット
■motet【モーテット/仏モテ】morris dance【モリス・ダンス】経文歌。中世末期からルネサンス期のポリフォニーによる教会歌で, 模倣的な無伴奏様式で歌われる。声部ごとに異なる言語 (ラテン語, フランス語を併用)で, 歌詞も宗教的な, 別のパートは世俗的な内容という方法で作られている=motette(独), motetto(伊)

協和絃

317
▼それが何となく楽玻璃グラス・ハーモニカのようでもあるが、とにかく、その狭間はざまを通過する音は、恐らく弱音器でもかけられたように柔げられるであろうから、鐘鳴器カリルロン特有の残響や、また、協和絃きょうわげんをなしている音ならば、どんなに早い速度で奏したにしても、或る程度までは混乱を防ぎ得るのである。317p
■協和音consonance 同時に鳴らされた二つ以上の楽音が互いによく融け合った時、その和音を協和音という。完全協和音(8度・5度・4度)と不完全協和音(長短3度など)の別がある。【広辞苑】

曲毬きょくまり

224
▼相変らず法水は、さも芝居気たっぷりな態度で、奇矯に絶した言を曲毬のように抛り上げる。224p
■曲鞠 曲芸として鞠を蹴ること。【広辞苑】
■蹴鞠 鹿革で製し、蹴って遊ぶまり。昔の貴人の遊戯。庭上で、数人が革沓をはき、鞠を懸カカリの木の下枝より高く蹴上げることを続け、また受けて地に落すまいとするもの。その場を鞠壺または鞠庭といい、七間半四方が本式で東北隅には桜、東南に柳、西南に楓、西北に松を植え、四本懸しほんがかりと称する。平安末期以後盛んに行われ、飛鳥井アスカイ・難波ナンバ両家が師範。まり。まりけ。しゅうきく。【広辞苑】

★江戸大神楽の演目には昔から十三番といわれている。それぞれ名義があって、曲にも変化がある。曲撥の曲取りが、三本四本五本と差別があり、四十八手の取分けがあるのと同じに、曲鞠は太神楽の表芸で鞠の曲取りだが、これにも三つと七つまでの取分けがある。【「江戸太神楽」 十二代家元鏡味小仙 昭和55年】

★江戸浅草の曲鞠芸
 中世・近世の日本でも蹴鞠は結構盛んで、なかには名足もかなりいた。江戸後期の肥前平戸藩主松浦静山(1760〜1841)の膨大な随筆集『甲子夜話』には、天保12年(筆者注 静山の没年)、江戸浅草の奥山で評判だった鞠芸人の曲鞠芸が絵入りで紹介されている(東洋文庫本『甲子夜話』三篇第七七話)。
一 煙草吃(タバコノミ) 鞠を蹴上げながら片手に草盆を提げ、もう一方の手にもったキセルで煙草を吸う。
二 襷掛(タスキガケ) 蹴上げた鞠が落ちてくるところを身体で受け、襷を掛けるように上体の表面に添って鞠を転がす。
三 八重桜(ヤエザクラ) 蹴上げて落ちてくる鞠を、まず肩で受けとめてから腕の方へ流し、次にこれを跳ね上げて額の上で上下させ、さらに頭頂部でも衝いて上下させる。
四 負鞠(オイマリ) 高く蹴上げて落ちてくる鞠を背中で受け止め、其処で上下させる。
五 足袋脱(タビヌギ) 右足で鞠を蹴上げながら、左足の足袋を脱ぐ。
六 文字書(モジカキ) 鞠を蹴上げながら紙上に字を書く。
七 乱杭渡(ラングイワタリ) 地上三尺(約90センチ)の高さで距離2間半(約4.5メートル)にわたって立ち並んでいる杭の列の上を、鞠を蹴上げながら歩いて渡る。
八 下り藤(サガリフジ) 前記七が終わったところで、松の木に両手でぶら下がり、浮いた足で鞠を蹴上げる。
九 梯子登(ハシゴノボリ) 鞠を蹴上げながら階段を上り下りする。
十 八橋(ヤツハシ) 八つに折れ曲がった細い橋板の上を鞠を蹴上げながら渡る。

「よしはらやうじ廓の四季志 尾張屋内長尾」渓斎英泉 コマ絵の中に曲鞠。


「流行猫の曲手まり」歌川国芳 曲毬の名手・菊川国丸の妙技を猫に見立てている。
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曲面の壁

305
▼この館には、所々円天井や曲面の壁や、また気柱を作っているような部分もあるので、僕は混沌としたものを想像していた。305p

虚数

534
▼即ち、その時寝室に潜んでいた人物に、一つの虚数を付ける事が出来るのです。534p
■i (虚数単位)を i2=-1 により定義し、これをも数と考え、b を実数とする時、実数 b と i との積 bi と実数 a との和 a+bi を複素数といい、実数でない複素数を虚数という。また、bi の形の虚数を純虚数という。【広辞苑】
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切石

・積211,薔薇色の小さな・210
▼長い矩形に作られている本館の中央は、半円形に突出していて、左右に二条すじの張出間アプスがあり、その部分の外壁だけは、薔薇色の小さな切石を泥膠モルタルで固め、九世紀風の粗朴な前羅馬様式プレ・ロマネスク・スタイルをなしていた。勿論その部分は礼拝堂に違いなかった。けれども、張出間アプスの窓には、薔薇形窓がアーチ形の格子の中に嵌はまっているのだし、中央の壁面にも、十二宮を描いた彩色硝子ステインド・グラスの円華窓のある所を見ると、これ等様式の矛盾が、恐らく法水の興味を惹いた事と思われた。然し、それ以外の部分は、玄武岩の切石積で、窓は高さ十尺もあろうという二段鎧扉になっていた。210-1p

■用途に従って種々の形に切った石材。【広辞苑】
■切石積 正方形または長方形に正しく加工した石片を規則正しく積んで造った壁体。【広辞苑】

切石積の石造り教会 長崎県頭ヶ島教会堂

記録筒

546→オルゴール
▼「所で、この羅針儀式の特性が、貴女の詭計に最も重大な要素をなしているのです。と云うのは、 この合わせ文字を、閉じる時の方向と逆に辿って行くと、三回の操作で閂かんぬきが開く。また、それを反対に行うと、掛金が閂孔の中に入ってしまうのですからね。つまり、開く時の基点は閉ざす時の終点であり、また、閉じる時の基点は開く時の終点に相当する訳なのです。ですから、実行は至極単純で、要するに、その左右廻転を恰好に記録するものがあって、またそれに、文字盤の方へ逆に及ぼす力さえあれば……。そうすれば、理論上鎖された閂が開くと云う事になりましょう。勿論内部からでは、あの鉄函の鍵は問題ではないのですよ。で、その記録筒と云うのが、何あろう、あの廻転琴オルゴールなのでした」 546p
 Automata
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金星

281,・の後方282,・の半径282
▼「ところで、その前に是非知って置かねばならないのは、惑星の記号が或る化学記号に相当すると云う事なんです。Venusヴィナスが金星である事は御承知でしょうが、その傍ら銅を表わしています。また、Mercuryマーキュリーは、水星であると同時に、水銀の名にもなっているのです。然し、古代の鏡は、青銅ヴィナスの薄膜の裏に水銀マーキュリーを塗って作られていたのですよ。そうすると、その鏡面に――つまり、この図では金星の後方に当るのですが、それには当然、帷幕の後方から進んで来る犯人の顔が映る事になりましょう。何故なら、金星の半径を水星の位置にまで縮めると云う事は、素晴らしい殺人技巧であったと同時に、犯行が行われて行く方向も、また博士と犯人の動きさえも同時に表わしているからなんです。そして、次第に犯人は、それを中央の太陽の位置にまで縮めて行きました。太陽は、当時算哲博士が終焉を遂げた位置だったのです。然し、背面の水銀マーキュリーが太陽と交った際に一体何が起ったと思いますか?」281-2p

■Venus[羅] 太陽系の惑星の1。地球のすぐ内側に軌道を持つ。太陽からの距離は1億821万km、内合の時の地球からの距離は4千万km。225日で太陽を一周。直径は地球よりわずかに小さく、質量は約0・8倍、表面は厚い雲でおおわれ、光の反射率は0・78。衛星はない。中国や日本の古記録に「太白昼見ゆ」とあるように、最大光度は一等星の数十倍になる。夕方西空に見える時、「宵の明星」または「ゆうずつ(長庚)」、明け方東天に見える時、「明けの明星」または「明星あかぼし」という。漢名、 太白星。【広辞苑】
■♀ 金星を示し、由来は、ギリシア神話で金星とは美の女神ビーナスを言い、その女神が美しい自分を見るために持っていた手鏡を図案化したもの。
★インド占星術における惑星が支配する金属は、太陽は銅、月は鐘青銅、火星は銅、水星は鉛、木星は金、金星は銀、土星は鉄。

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『近世迷宮事件考察』

205→小城魚太郎こしろうおたろう→キューダビイ壊崩録かいほうろく
▼所で支倉君、最近現われた探偵小説家に、小城魚太郎という変り種がいるんだが、その人の近著に『近世迷宮事件考察』と云うのがあって、その中で有名なキューダビイ壊崩録を論じている。205p

★小城魚太郎と虫太郎、中島河太郎、岡村雄輔等の関係については、こちらを参照。

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