し02 使徒達>>>出埃及記

使徒達怯懦きょうだな卑屈な恰好をした240
支那古代陶器197,・元代463,古代・328,338
忍緒しのびお310
死の室沈鬱な475,陰惨な・575
『死の舞踏』505,509,524→トーテン・タンツ
死の舞踊陰惨な505
屍斑221,222
師父326→ゲルベルト
思弁学271
四方の壁面336→図書室
射影的な観察562
赭丹・色しゃたんしょく278,・を流したように 462
瀉痢塩345
洒落しゃれた積木小屋350→シァレー式
282
朱色の衣裳569,645,・の上衣583
朱線泥焼テルラコッタの216,328
宗教会議454
宗教裁判所セヴィリアの442,セヴィリア・443
宗教審問所西班牙624
宗教戦争火術初期の449
修道僧581,中世の・639
守護神541,585→聖パトリック,607→聖セントゲオルヒ
酒石酸616→発火鉛
出埃及記259

使徒達

怯懦きょうだな卑屈な恰好をした240
▼円廊の対岸には、二つの驚くほど涜神的な石灰画が壁面を占めていた。右側のは処女受胎の図で、如何にも貧血的な相をした聖母マリアが左端に立ち、右方には旧約聖書の聖人達が集っていて、それがみな掌で両眼を覆い、その間に立ったエホバが、性慾的な眼でじいっと聖母マリアを瞶ながめている。左側の「カルバリ山の翌朝」とでも云いたい画因のものには、右端に死後強直を克明な線で現わした十字架の耶蘇があり、それに向って、怯懦な卑屈な恰好をした使徒達が、怖る怖る近寄って行く光景が描かれていた。240p
■(Apostles) イエス=キリストが福音を伝えるために特に選んだ一二人の弟子。ペテロ(シモン)・アンデレ・ヤコブ・ヨハネ・フィリポ・バルトロマイ・トマス・マタイ・アルファイの子ヤコブ・タダイ・熱心党(者)のシモン・イスカリオテのユダ。ユダは後に叛逆して除かれ、マッテヤがこれに代った。後にはパウロ・バルナバ・イエスの兄弟ヤコブらも同格者として加えられた。十二使徒。【広辞苑】

支那

古代陶器197,・元代463,古代・328,338
▼「悠っくりしようよ支倉君、あの日本で一番不思議な一族に殺人事件が起ったのだとしたら、どうせ、一、二時間は、予備智識に費るものと思わなけりゃならんよ。大体、いつぞやのケンネル殺人事件──あれでは、支那古代陶器が単なる装飾物に過ぎなかった。所が今度は、算哲博士が死蔵している、カロリング朝以来の工芸品だ。その中に、或はボルジアの壷がないとは云われまい。然し、福音書の写本などは一見して判るものじゃないから……」197p
■「秦シン」の転訛 外国人の中国に対する呼称。初めインドの仏典に現れ、わが国では江戸中期以来第二次大戦末まで用いられた。戦後は「支那」の表記を避けて多くシナと書く。【広辞苑】
★連載直前、「新青年」誌上でヴァン・ダインの「ケンネル殺人事件」が連載されていた。
ケンネルM.C. 1932. ---初出 s8.1〜5 新青年「ケンネル殺人事件」延原謙譯

忍緒しのびお

310
▼「すると、事に依ったら吊具足は、一人で着られるかも知れないが、大体兜の忍緒しのびおを締めたのは誰だね。その証拠には、他のものと比較して見給え。全部正式な結法ゆいほうで、三乳みつぢから五乳いつぢまでの表裏二様――つまり六通りの古式に依っている。ところが、この鍬形くわがた五枚立の兜のみは、甲冑に通暁している易介とは思われぬほど作法外れなんだ。僕がいま、この事を庄十郎に訊ねたと云うのも、理由はやはり君と同じところにあったのだよ」310-311p
■忍の緒 兜の鉢につけてあごのところで結ぶ紐。しのびねお。兜の緒。【広辞苑】

死の室

沈鬱な475,陰惨な・575
▼そして、そのおどろと鳴り轟く響きが、陰惨な死の室の空気を揺すり始めたのである。それこそ、中世独逸ゲルマンの伝説――「魔女集会ヴァルプリギス」の再現ではないだろうか。575p
★「少なくとも、この古い家には怖ろしい毒気が充満しているという感じを実証するね」とヴァンスは答えた。「まるで妖婆の夜宴みたいだよ」彼はマーカムに、ひょうきんな微笑をくれた。「どうやら君の仕事は悪魔祓はらいの様相を帯びてきそうな気がする」 井上勇訳創元推理文庫版 
★「少くもさういふ氣はするね。この家には毒氣が満ちてゐるやうな氣がする。まるで惡魔の所業しわざだよ。君の仕事は惡魔祓いといふ格だね。」 「グリーン家の惨劇」s.4.10平林初之輔譯 博文館版107-12p
 グリーン サバトに向かう魔女たち

『死の舞踏』

505,509,524→トーテン・タンツ
▼「ああ、驚くべきじゃないか。これは、ホルバインの『死の舞踏トーテン・タンツ』なんだよ。しかも、もう稀覯に等しい一五三八年里昂リオンの初版なんだ」505p
 ホルバイン「死の舞踏」第7圖

死の舞踏

陰惨な505
▼それには、四十年後の今日に至って、黒死館に起った陰惨な死の舞踊を予言するかのように、明瞭りとディグスビイの最終の意志が示されていた。505p

屍斑

221,222
▼彼は口腔内にも光があるのを確めてから、死体を俯向けて、背に現われている鮮紅色の屍斑を目がけ、グサリと小刀ナイフの刃を入れた。そして、死体をやや斜にすると、ドロリと重たげに流れ出した血液で、忽たちまち屍光しこうに暈ぼっと赤らんだ壁が作られ、それがまるで、割れた霧のように二つに隔てられて行き、その隙間に、ノタリノタリと血が蜿くって行く影が印されて行った。
■死斑・屍斑 人の死後、1〜10時間を経て、皮膚に生ずる紫色の斑点。下側になった体の部分に血液が沈降するために生ずる。【広辞苑】

師夫

326→ゲルベルト
▼「そのゲルベルトと云うのが、シルヴェスター二世だからさ。あの呪法典を作ったウイチグスの師父に当るんだ」326p
■父のように敬愛する師。【広辞苑】

思弁学

271
▼「あの一句は、ゲーテの『ファウスト』の中で、尨犬むくいぬに化けたメフィストの魔力を破ろうと、あの全能博士が唱える呪文の中にある、勿論その時代を風靡ふうびした加勒底亜カルデア五芒星術の一文で、火精サラマンダー・水精ウンディネ・風精ジルフェ・地精コボルトの四妖に呼び掛けているんだ。ところで、それを鎮子が分らないのを不審に思わないかい。大体こう云った古風な家で、書架に必ず姿を現わすものと云えば、まず思弁学でヴォルテール、文学ではゲーテだ。ところが、そう云った古典文学が、あの女には些細な感興も起さないんだ。それからもう一つ、あの一句には薄気味悪い意思表示が含まれているのだよ」
■思弁speculation 実践に対して、観想・理論の意味。 経験によることなく、ただ純粋な思考によって真理の認識に到達しようとすること。知的直観の意味をもつ場合もある。思弁哲学【広辞苑】
■spekulative Philosophie[独] もっぱら思弁に基づく哲学。プラトン・アリストテレス以来、形而上学の多くは思弁哲学であるが、フィヒテ・シェリング・ヘーゲルの哲学が特にこの語で呼ばれる場合がある。【広辞苑】

関連サイト

四方の壁面

336→図書室
▼然し、扉を開くと、そこには人影はなかったけれど、法水は眼の眩むような感覚に打たれ た。四方の壁面は、ゴンダルド風の羽目パネルで区切られていて、壁面の上層には囲繞式い にょうしきの採光層クリアストーリーが作られ、そこに並んでいる、イオニア式の女像柱カリアテ ィデが、天井の迫持せりもちを頭上で支えている。そして、採光層クリアストーリーから入る光 線は、「ダナエの金雨受胎きんうじゅたい」を黙示録の二十四人長老で囲んでいる天井画に、 何とも云えぬ神々こうごうしい生動を与えているのだった。なお床に、チュィルレー式の組字を つけた書室家具が置かれてある所と云い、また全体の基調色として、乳白大理石と焦褐色ヴ ァンダイクブラウンの対比を択えらんだ所と云い、その総てが、到底日本に於ては片影すら望 む事の出来ない、十八世紀維納風クンメルスブリュケルの書室造りだったのである。336p

射影的な観察

562
▼然し、その方法となると、一つの射影的な観察があるに過ぎない。562p
■物の影をうつすこと。また、うつった影。;直積集合 X=A1×A2×…×An の要素 a=(a1, a2,…, an) に ai を対応づける写像をXからAiへの射影という。
■射影幾何学 点・直線・平面を基礎図形(無定義用語)としてそれらに結合の公理を設定し展 開する幾何学。一五世紀ごろの投影画法の理論から組織的研究が始められた。【広辞苑】

赭丹

・色しゃたんしょく278,・を流したように 462
▼無髯で赭丹色をした顔には、顴骨突起と下顎骨が異常に発達している代りに、鼻翼の周囲 が陥ち窪み、その相は如何にも醜怪で──と云うよりも寧ろ脱俗的な、所請胡面梵相とでも云 いたい、まるで道釈画か十二神将の中にでもあるような、実に異風な顔貌だった。278p
▼然し、悲鳴を聴き付けられて、クリヴォフ夫人は直ちに引き上げられたけれども、頭髪は殆 んど無残にも引き抜かれていて、おまけに毛根からの出血で、昏倒している彼女の顔は、一面 に赭丹を流したように素地を見る事が出来なかったそうであった。462p
■赭ソホ 赤色の土。赭土(ソホニ)。上代、物に塗るのに用いた。また、その色。【広辞苑】
■丹タン 赤土。硫黄と水銀との化合したもの。辰砂シンシヤ。丹砂。 オレンジ色の日本画顔料。古 くから鉛に硫黄と硝石とを加えて焼いて製した。化学的には四三酸化鉛。鉛丹。黄丹。【広辞苑】

瀉痢塩

345
▼「下剤(瀉痢塩が精製硫酸マグネシウムなればなり)、殺菌剤、睡眠薬だ。犯人は、この三つ で何をしようとするんだろう?」 「いや、すぐに捨ててしまった筈だよ。ところが、嚥まされたのは吾々なんだ」と法水は此処でも また、彼が好んで悲劇的準備と呼ぶ奇言を弄ぼうとする。345p
■瀉利塩 硫酸マグネシウムの七水和物。→硫酸マグネシウム 化学式 MgSO4 七水和物は 瀉痢塩シヤリエンという。白色の斜状結晶で、水に溶けやすく苦味をもち、海水・鉱泉中に含有。瀉 下剤とし、また染色その他工業用として用いる。【広辞苑】

洒落しゃれた積木小屋

350→シァレー式
▼本館の左端*と密着して建てられていて、造園倉庫と云う掛札のしてある、シァレー式(瑞西 山嶽地方、即ちアルペン風の様式)の洒落た積木小屋から始まっている。350p

関連サイト

282
▼ところで田郷さん、S一字でどう云うものが表わされているでしょうか」と法水は、調子を弛ゆ るめずに続けた。「第一に太陽、それから硫黄いおうですよ。ところが、水銀と硫黄との化合物 は、朱ではありませんか。朱は太陽であり、また血の色です。つまり、扉の際で算哲の心臓が 綻ほころびたのです」282p
■黄ばんだ赤色。赤色の顔料。成分は硫化水銀。天然には辰砂シンシヤとして産する。水銀と硫化 カリウムと苛性カリとを熱して製し、または水銀と硫黄とを混じ、これを加熱昇華させて製する。 銀朱。【広辞苑】

朱色

の衣裳569,645,・の上衣583
▼槍尖ランスヘッドの根元には、滲み出ている脂肪が金色に輝いていて、それと宮廷楽師カペ ルマイスターの朱色の上衣とが、この惨状全体を極めて華やかに見せていたのである。583p

朱線

泥焼テルラコッタの216,328
▼「とにかく、魔法博士デイの隠顕扉いんけんドアがある程だからね。この館にそれ以上、技 巧呪術アート・マジックの習作が残されていないとは云えまい。屹度きっと、最初の英人建築技 師ディグスビイの設計を改修した所に、算哲のウイチグス呪法精神が罩こもっているに違いな いのだ。つまり、一本の柱、貫木にもだよ。それから蛇腹、また廊下の壁面を貫いている素焼 テルラコッタの朱線にも、注意を払っていいと思う」328p

宗教会議

454
▼「そう云う訳で、猶太人ジュウは、それに一種宗教的な許容を認めている。つまり、自己を防 衛するに必要な虚言だけは、許されねばならない――とね。然し、無論僕は、それだけでクリ ヴォフを律しようとするのじゃない。僕は飽くまで、統計上の数字と云うものを軽蔑する。だが然 しだ。あの女は、一場の架空談を造り上げて、実際見もしなかった人物が、寝室に侵入したと 云った。如何にも、それだけは事実なんだよ」
「ああ、あれが虚妄だとは」検事は眉を跳ね上げて叫んだ。「すると君は、その事を何処の宗 教会議で知ったのだね」453-4p
■Ecumenical Council キリスト教会における教職者の会議。5世紀以後は特にローマ-カトリッ ク教会での呼称。皇帝または教皇が召集し、中世末以来、教義決定の最高権威をもつようにな った。有名なものにニカイア(325年)・クレルモン(1095年)・コンスタンツ(1414~18年)・トリエント (1545~63年)などがある。プロテスタントでは総会議という。宗教会議。【広辞苑】

宗教裁判所

セヴィリアの442,セヴィリア・443
▼「時代は十六世紀の中葉フィリップ二世朝だが、この一つは、淫虐的ザディスチックな嗜血 癖しけつへきの、寧ろ異例的標本とでも云うものなんだ。西班牙スペインセヴィリアの宗教裁 判所に、糺問官補のフォスコロと云う若い僧キャノンがいたのだ。所が、彼の糺問法が頗る鈍 いばかりでなく、万聖節に行われる異端焚殺行列オウト・デ・フェにも恐怖を覚えると云う始末 なので、止むなく宗教裁判副長のスピノザは、彼を生地サントニアの荘園に送り還してしまった のだ。所が、それから一、二ケ月後に、スピノザは斯う云うフォスコロの書翰を受取ったのだ が、同封の紙片に描かれたマッツオラタ(中世伊太利でカーニワ゛ルに於ける最も獣的な刑罰) の器械化を見て、思わず一驚を喫してしまった。
 ――セヴィリアの公刑所には、十字架と拷問の刑具と相併立せり。されど、神もし地獄の陰 火を点し、永遠限りなくそれを輝かさんと欲せんには、まず公刑所の建物より、回教サラセン 式の丈高き拱格アーチを逐うにあらん。吾、サントニアに来りてより、昔ゴーティア人の残せし 暗き古荘に棲む。実に、その荘は特種の性質を有せり。即ちそれ自身が既に、人間諸種の苦 悩を熟慮したる思想を現わすものにして、吾そこに於いて種々の酷刑を結合し或は比較して、 終ついにその術すべに於いて完全なる技師となれり――と。
 ねえ熊城君、こういう凄惨な独白は、抑々そもそも何が語らせたのだろうか。どうしてフォスコ ロの嗜血癖が、残忍な拷問刑具の整列裡では起らずに、美しいビスカヨ湾の自然のなかで生 れたのだろうか。そのセヴィリア宗教裁判所とサントニア荘との建築様式の差を、この事件で も決して看過してはならんと、僕は断言したいのだよ」とそこで彼は激越な調子を収めた。そし て、以上二つの例を黒死館の実際に符合させて、その様式の中に潜んでいる恐ろしい魔力を 闡明せんめいしようと試みた。442-3p

宗教審問所

▼原注 聴耳筒――。西班牙宗教審問所に設けられたのが最初。ウファ映画「会議が踊る」 の中で、メテルニッヒがウェリントンの会話などを盗み聴くあれがそうである。
■the inquisition, 【SSD】spanish 【異端審問 クセジュ 82p〜】
■異端審問inquisition 一三世紀以降、南欧のカトリック教会で、異端者の摘発と処罰のために設 けた裁判制度。ローマ教皇直属の機関で、徹底した密告制度と拷問を伴う尋問を特色とした。 【広辞苑】

宗教戦争

火術初期の449
▼常に審美性を忘れない法水の捜査法が、ここにもまた、火術初期の宗教戦争で飾り立て た、華麗極まりない終局キャタストロフを作り上げたのだった。然し、検事は末だに半信半疑の 面持で、莨を口から放したまま茫然ぼんやりと法水の顔を瞶めている。それに法水は、皮肉に 微笑みながらも、ハートの史本を繰りその頁ページを検事に突き付けた。449p
■宗教上の衝突に起因する戦争。特にヨーロッパにおいて宗教改革後、旧教徒と新教徒との 間に行われ、政治的・経済的利害ともからんだ激しい戦争。【広辞苑】

修道僧

・581,中世の639
▼その光りは、宛がらゴテスシャルク(第一十字軍以前の先発隊を率いた独逸の修道僧)の 見た、聖イエロニモの幻のように思われる。581p
■修道士monk カトリック教会で従順・貞潔・清貧の三誓願を立て修道院に共住し、また、独住 して修道する者。修道僧。【広辞苑】
 zurbaran san francisco

守護神

541,585→聖パトリック,607→聖セントゲオルヒ
▼成程、道徳世界の守護神――支倉君!541p
■国家・民族・家族・親族・個人・職業または寺院などを守護する神。まもりがみ。【広辞苑】
■genius[通例修飾語を伴って](人・土地などの)守り神,守護神【JSE】【守護聖者 中公新書】
★最初の一回のみ、語彙通り。本来は守護聖者である。

酒石酸

616→発火鉛
▼発火鉛(酒石酸を熱して密閉したもの。空気に触れると、舌のような赤い閃光を発して燃え る)を、硫黄と鉄粉とで包んだと云われる、ベーコンの投擲弾を考えると、そこに技巧呪術の本 体が暴露されなければならない。616p
■tartaric acid 分子式 COOHCH(OH)CH(OH)COOH  水酸基をもつカルボン酸の一。葡萄 その他の果実中に存在する。酒石から製する。無色の柱状の結晶。水に溶け易く、水溶液は 爽快な酸味をもつ。天然のものは右旋性。清涼飲料水の製造、医薬、染色などに用いる。【広辞苑】
★「ロウソクの科学」マイケル・ファラデー 山形浩生訳
 第6章 呼吸はなぜ燃えるロウソクと似ているか。
 ここにあるのは、炭素並に、いやむしろ炭素以上に実によく燃える燃料です。よく燃えすぎ て、空中にさらしただけで勝手に燃え出します。こんなふうに [と自然発火性鉛(lead pyrophorus)のつまったガラス管を割る]。この物質は鉛です。すばらしく燃えやすいのがわか ったでしょう。細かく刻まれていて、暖炉の石炭みたいです。空気がこいつの表面にも中にも入 り込めますので、燃えます。でも、こうやって固まりで転がっているときには、なぜさっきみたい に燃えないんでしょうか。単に、空気がたどりつけないからというだけです。すごい熱をつくれる し、その熱をかまどやボイラーの下で使いたいところですが、燃えた結果できる燃えかす部分 が、燃えずに下に残っている部分から離れられないんです。だから下にある部分は大気と接 触できなくて、だから燃えてしまわないんですね。炭素とはえらいちがいでしょう!
原注6-1:  自然発火性鉛(Lead pyrophorus)は、乾燥した酒石酸鉛をガラス管(一方の端を閉じて、もう 一方は細長く引き延ばしておく)に入れて蒸気が出なくなるまで熱する。そうなったら、管の開 口部をバーナーで封印する。その管を割って中身を空中に振り出すと、赤い閃光をあげて燃え る。
関連サイト
★日本語訳の出版は、岩波文庫 ロウソクの科学 ファラデー矢島 祐利 訳 1933年12月である。
関連サイト

出埃及記

259
▼スウェーデンボルグ神学(「黙示録解釈」及「アルカナ・コイレスチア」に於いて、スウェーデン ボルグは出埃及記およヨハネ黙示録の字義解釈に、牽強附会も甚だしい数読法を用いて、そ の経典が、後世に於ける歴史的大事変の数々予言せるものとなせり)259p
■[Exodus 羅] 旧約聖書中のモーセ五書の一。モーセに導かれたユダヤ人のエジプト脱出に ついて記す。十戒はこの中にある。【広辞苑】

△辞典リスト   △PAGETOP